離婚をすべきかどうか・・・。これは人生において最も大きな難題のひとつであり、最も精神的にも身体的にも負担の生じる課題ともいえます。事実、離婚は人生において、配偶者の死別の次に、最もストレスを生じさせる出来事となっています。離婚は結婚以上に、現在の経済的、精神的、身体的環境が変化します。
離婚をすべきかどうかを決定する前に考慮すべきこととして、離婚後の経済的な問題と、感情的な問題について熟慮しておく必要があります。特に女性が離婚をしようとするときには、経済的な問題が発生することが多く、離婚した後も自立して生活することができるか、子供を養育することができるか、親の介護をすることができるか、について検討しなければなりません。もし、経済的な自立が困難であっても感情的な問題により離婚をしなければならないときは、離婚をする際に、離婚協議書等により、財産分与や慰謝料、養育費の定めに合意しておく必要があります。これらについて正確かつ法的に有効な書面を作成しておかなければ、後日相手方の支払いが滞ったときに紛争に発展しかねません。財産分与や慰謝料については離婚時に決定することが多いですが、将来の養育費や離婚後扶養については、きちんと取り決めないことが多く、また、滞納した場合の解決方法も定めていないことが多いため、資力のない一方の当事者は離婚後しばらくたって困窮してしまい、生活保護に頼るケースが非常に多くあります。このような不測の事態を防ぐためにも、離婚することに決定した場合には、必ず当事務所にご相談いただき、法的に効力のある離婚協議書等の作成を行なってください。
夫婦の問題の解決が即時に困難なときには、別居を行なうこともできます。別居を行なっている期間であっても、離婚届を提出していなければ、原則として婚姻が継続しているとみなされますので、扶養義務が発生します。そのため、離婚を検討中であっても経済的な自立が困難である場合には、別居を行ない、生活費を請求する選択肢も検討します。ただし、長期間別居の状態が継続していると、夫婦の実態がないと推定され、相手方から離婚を請求されることがあります。離婚の原因となる別居の期間の要件について法律上の規定はありませんが、おおよそ5年から7年間別居していれば、裁判上の離婚が認められる傾向があります。
話し合いにより離婚を決定し、市町村役場に離婚届を提出する場合には離婚原因を記載する必要はありませんが、裁判上で離婚が認められるには、民法第770条に定められている離婚原因によらなければなりません。その離婚原因は、①配偶者の不貞行為、②配偶者の悪意の遺棄、③配偶者が3年以上生死不明であるとき、④配偶者が重度の精神病であり、回復する見込みがないとき、⑤そのほか婚姻を継続し難い重大な事由があるとき、と規定されており、これ以外でのいわゆる「性格の不一致」や「価値観の相違」では、裁判上の離婚は認められません。ただし、これらにより婚姻を継続することが困難に至った場合は離婚が認められます。これらの離婚原因は、裁判上の離婚のみならず、協議上の離婚の場合にも、離婚をすべきかどうか、離婚が適当であるかどうか、の決定の際に用いられます。以下、個々の離婚原因について解説します。
(1)不貞 不貞とは、最高裁判所の判例によると、「配偶者のある者が自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」をいいます。性的関係が単なる一時の気の迷いである「浮気」であるか、継続的になされている「不倫」であるかは問いません。つまり、配偶者以外の異性との一度の性的関係であっても、離婚原因となり慰謝料請求の対象となります。また、買春や売春、強姦なども不貞とみなされます。不貞を理由に離婚や慰謝料を請求する場合には、不貞があったことを立証しなければなりません。
(2)悪意の遺棄 悪意の遺棄とは、正当な理由がないのに、夫婦の同居義務、協力義務、扶助義務に違反する行為、つまり文字通り配偶者に捨てられることをいいます。具体的には、配偶者が自分から家を出たり、相手を家から追い出すことなどがあります。夫婦間の同居義務については学者間の意見が分かれるところですが、夫婦双方が別居に同意していない限り同居義務があると解されています。しかし、同居義務、協力義務に違反していることのみをもって悪意の遺棄と認定することはほとんどなく、身体障害者で働くことができない妻を自宅に置き去りにして生活費を送金しなかったりした場合には、悪意の遺棄として認定された判例があります。
(3)3年以上の生死不明 配偶者が、生存を最後に確認できたときから3年以上生死が不明な状態であるときには、離婚を請求することができます。失踪宣告は7年間生死が不明でないと請求できませんが、離婚に関しては3年以上生死不明であれば離婚をすることができます。もちろん、「離婚することができる」のであって、実際に離婚を請求するかどうかは本人の決定に任されています。
(4)配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと 強度の精神病とは、夫婦として協力義務、扶助義務を果たすことができず、夫婦関係が破綻する程度の精神障害をいいます。老人性認知症については、認知症を発生したことのみをもって離婚を請求することは困難ですが、配偶者を判別することができないほどの障害があり、かつ、障害を負っている配偶者が離婚させられても今後の生活に支障がない場合には離婚が認められることがあります。もちろん、健康な配偶者の精神的負担も考慮しなければなりません。
(5)その他、婚姻を継続し難い重大な事由 婚姻関係がすでに破綻しており、回復する見込みがない場合には、離婚をすることができます。離婚原因の多くは、この事由によるものです。具体的には、①暴行や虐待(ドメスティック・バイオレンス=DV)、②不貞を立証するには足りないが、不貞の可能性が高いとき、③うつ病やアルコール中毒、軽度の精神障害、④性格の不一致や価値観の相違により婚姻関係が破綻している場合、⑤過度の宗教活動、⑥性交拒否、性的不能、性的異常などがあります。配偶者の貞操義務違反は、配偶者以外の異性との交際も含まれ、必ずしも性的関係に限られませんので、不貞行為が立証できない場合には、交際している事実を証する手紙や電話、メールなどの記録をもって、この「婚姻を継続し難い重大な事由」により離婚を請求することができます。また、単に信仰が違うことのみをもって離婚を請求することはできませんが、信仰に基づく宗教的活動のために頻繁に時間や金銭を費やすことにより、夫婦の協力義務に違反していたり、子供の教育上支障が生じた場合には、離婚の重大な理由となる判決が多数あります。また、配偶者の親族、特に配偶者の親との不和については、配偶者が嫁いびりなどの事実を知りながら傍観し、何もしなかった場合や、配偶者の親族に同調しているような場合には、離婚が認められます。
結婚生活の破たんについて責任のある方の配偶者(有責配偶者といいます)からの離婚請求は、原則として認められません。自ら不貞行為をしておきながら、愛人と再婚するために、離婚を請求するというようなことは信義誠実の原則に反し、同義的にも大きな問題があるため、離婚の原因を作った配偶者からの離婚請求は認められません。ただし、離婚原因のない配偶者が離婚の請求に応じる場合には、協議離婚として離婚することができます。例えば有責配偶者が多額の財産分与や高額な慰謝料を提示し、一方の配偶者がそれに応じる場合には、話し合いで離婚することが可能でしょう。
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